
リフォームポイント
オール電化のメリット・デメリット
公開日:2019年01月23日

オール電化とは、家の中で必要な熱エネルギーをすべて電気で賄うことです。
通常は電気とガスを併用しますが、オール電化住宅ではガスを使わず、お湯を沸かすのも調理をするのも電気しか使いません。お湯は電気料金の安い夜間に沸かし、昼間も使えるようにためておきます。調理は火の出ない電磁調理器を使います。冷暖房はエアコンのほか、電気を利用した床暖房などを使います。
熱源を電気だけに統一することで光熱費が抑えられる、経済的な住宅と考えられています。
オール電化のメリット
光熱費の節約ができる
オール電化にすることによって、これまでガスや石油で賄ってきたエネルギーを電気に一本化することができます。特にガスは使用してもしなくても基本料金がかかります。電気に一本化すれば基本料金は電気だけになり、光熱費の無駄をなくすことが可能です。
さらにオール電化では、電気代が安い夜間に沸かしたお湯を翌日の昼間や夜に使う仕組みになっています。給湯は家庭の光熱費の中で特に多くを占めているため、給湯にかかるコストを削減すれば、光熱費を大幅に節約することができます。
災害時の水を確保できる
オール電化住宅では、お湯は使う時にその都度沸かすのではなく、敷地内に設置したタンクにためて使います。つまり敷地内で常にタンクに入ったお湯を確保しているということです。
災害などで万が一ライフラインが使えなくなっても、当面の生活用水を貯湯タンクから使うことができます。通常ならば水道が復旧するまで使えない水が、少しでも確保できるという安心感があります。またガス、水道、電気の中で、災害時に最も早く復旧するのは電気です。
火災のリスクを軽減できる
オール電化住宅では火を使いませんので、火災のリスクを大きく軽減できます。
建物火災の原因の20%近くはコンロ周辺からの出火です。オール電化のIHクッキングヒーターでは、ガスのように炎が出ることはありません。炎が出なければ服や周囲のものに引火することも、ガス漏れから引火して火災を引き起こすこともありません。
特に小さな子供や高齢者がいるような家庭では、火のトラブルが暮らしの大きな不安材料となります。オール電化なら、火傷や火災の心配を最大限に抑えることが可能です。
住宅に熱源を持たないので安全
ガスを使う場合、都市ガスにしてもプロパンガスにしても住宅の中に敷設します。一方オール電化では熱源を電力会社が管理するため、住宅内には一切持ちません。住宅内に熱源がなければ、ガス漏れや不完全燃焼、一酸化炭素中毒の心配も軽減。安心、安全なシステムといえます。
また冬場の暖房においても、灯油やガスの暖房器具を使うことがありません。家の中に灯油を置いておく必要がなく、ガスの換気不足などの問題もなくなります。
火災保険には特別割引がある
オール電化を導入すると、火災保険料を抑えられる可能性があります。オール電化の住宅に対しては、保険料を特別割引する保険会社が増えているからです。
「オール電化住宅は火災のリスクが少ない」と認識しているのは保険会社も同様で、新築だけでなくリフォームの場合にも適用されます。加入している火災保険に特別割引があるか、チェックしてみるとよいでしょう。
環境にやさしい
オール電化の大きな特徴は、深夜電力を利用することです。電力が余りがちな深夜電力を使って昼間に使うお湯を沸かすなどしています。昼間に電力使用が集中することを緩和し、さらに夜間電力を無駄にしないという二つの貢献をしています。
またオール電化住宅の給湯システムであるエコキュートは、大気中の熱を利用するヒートポンプ技術を採用しているため、CO2の排出を大きく削減しています。冷媒にはフロンではなく自然冷媒が使われており、地球環境に配慮されています。
手入れが簡単で空気が汚れない
オール電化住宅では調理機器にIHクッキングヒーターを使います。表面はガスコンロのように凸凹がなく平面のガラストップですので清掃がとても楽です。ガス調理のようにススが発生することがなく、ガスが燃焼することによる空気の汚れもありません。キッチンまわりを比較的清潔に保てることもメリットのひとつです。
また炎が出ないため二酸化炭素の発生が少なく、ガス燃焼による不快な臭いが発生しません。空気を無駄に暖めることがなく、クリーンで快適な空気を保てます。
補助金制度や電気代が安いプランがある
オール電化でエコキュートを導入した場合、補助金制度がありお得です。ただし一部対象外となる機器がありますので確認しましょう。
またオール電化住宅では深夜電力を給湯に利用しますが、深夜から早朝にかけて電気料金が大幅に割引される電力プランを選択することで、さらに電気代を節約することができます。電気代が安い時間帯にタイマーを利用して炊飯や洗濯をするなど、工夫次第で大幅に電気代を削減できるでしょう。
ローンの金利優遇やリース制度がある
オール電化の導入は初期費用が1つのネックとなっていますが、金利優遇のローンを利用すれば、無理なく導入することができます。金融機関によってはオール電化導入に優遇金利を設けていることがあり、リフォームでも利用できます。金利が安いことで知られている住宅ローンよりもさらに低い金利に設定されていますので、賢く利用すると良いでしょう。
また初期費用をほとんどかけずに導入する方法として、リース制度があります。光熱費の節約分をリース料金にあてることができ、メンテナンスもついているので安心です。
オール電化のデメリット
昼間の電気代が高い
オール電化住宅では、通常ガスを使う給湯や調理もすべて電気を使うことになるため、調理を多くする人、お湯をたくさん使う人は電気代が高くなりすぎてしまう、という懸念があります。
オール電化にする場合、通常は電力会社とオール電化専用の電力プランで契約します。夜間の電気料金が安いプランです。夜の安い電気で沸かしたお湯をためて昼間も使う、これで給湯にかかる光熱費を抑えることができます。
しかしオール電化専用プランは昼間の電気代が通常よりも高い、というデメリットがあります。このため昼間に電気を多く使う家庭では、光熱費の抑制効果があまり得られません。住人のライフスタイルにオール電化が合っているか、見極めた上で導入を検討しましょう。
火力・調理法・調理器具に制限が生じる
IHクッキングヒーターは炎が出ませんので、海苔やスルメを直火で炙ることはできません。ヒーターに密着させていなければ加熱できないため、フライパン返しや鍋ふりもできません。例外はありますが、基本的に土鍋やアルミ鍋といった調理器具は使えません。フライパンも同様で、今まで使っていた調理器具が無駄になる可能性も。
さらにIHクッキングヒーターには火力にも制限があります。すべてのコンロを最大出力で使うことはできません。調理中に火力不足を感じることもあるでしょう。鍋底しか加熱されないため、鍋の中全体に熱をいきわたらせるにはしっかりと混ぜ合わせなければならない、といった不便さもあります。
停電時の不安

オール電化住宅では家の中のすべてのエネルギーを電力に頼るため、停電の時には一切の機器が使えなくなるという不安が付きまといます。一時的な停電であればそれほど深刻な問題ではありませんが、災害などで長期的に電力供給がストップすると、料理も入浴も一切できなくなり不便です。
ただし家庭内で電気を一切使わない機器はそれほど多くありません。実際のところ、停電ではオール電化住宅でなくともほとんどの機器が使えなくなります。
導入時の費用と設置場所の確保
オール電化の導入費用は決して安くありません。たとえばエコキュートはガス給湯器と比べて本体が高価である上、設置には別途工事費用などがかかります。基礎工事費に加えて電気工事や水道工事などの費用が上乗せされ、初期費用が高額になります。
また電気料金が安い深夜に翌日使うお湯をすべて沸かしておくため、エコキュートは巨大なタンクを内蔵している設備です。4人家族では370ℓ程度のタンクを使うため、それだけの設置場所を確保しなければなりません。設置場所を確保するための工事が必要になる場合もあります。
お湯の供給と衛生面への不安
オール電化住宅では電気料金が安い深夜にお湯を沸かし、そのお湯を翌日の深夜まで使います。減った分だけをまた深夜に沸かす、ということを繰り返します。
ところが想定よりも多くのお湯を使うことがあれば、当然タンク内のお湯はなくなります。お湯が足りなくなってくると昼間でも追加で湯沸しを始めますが、間に合わずにお湯切れになることがあります。
またその都度湯沸しをするのではなく、水を注ぎ足していく仕組みであるため、衛生上飲み水に向きません。飲料水として使う場合は、1度沸騰させる必要があります。