
基礎知識
バリアフリーリフォームの補助金制度と減税
公開日:2016年09月14日

バリアフリーとは、「障害をなくす」という意味の建築用語です。バリアが障害、フリーは取り払うという意味があります。 高齢者や車椅子の人、身体が不自由な人でも容易に移動できるよう段差をなくしたり、手すりをつけたりすること、または、その仕様を指しています。
バリアフリー住宅という言葉が浸透し、注目されていることから、段差がなくて手すりが多い家のことを真っ先に思い浮かべる人が多いですが、最近では、住宅に限らず広い意味で使われるようになりました。つまり、偏見や差別をなくし、すべての人々が暮らしやすい環境、というような意味まで含みます。
バリアフリーリフォームの補助金制度

バリアフリーリフォームを行う場合、条件を満たせば介護保険の高齢者住宅改修費用助成制度を利用して補助金を受け取ることができます。
補助金を受けるには要介護、要支援のいずれかの認定を受けていること、被保険者証の住所と一致していること、実際に住んでいる住宅であることが条件となります。工事費用20万円を限度とし、工事費の9割が支給されます。つまり支給額の上限は18万円です。
<補助金を受ける条件>
- 要介護、要支援の認定を受けていること
- 被保険者証の住所と住んでいる住宅が一致していること
- 実際に住んでいること
介護保険を利用して助成金を受け取りたい場合は、まずは介護保険に加入している市町村へ、要介護認定の申請をすることになります。申請をすると、調査員がどの程度の介護が必要であるかを調査し、要介護の有無やレベルを判定します。判定には一定の時間がかかりますが、サービスは申請した日まで遡って利用することが可能です。
介護保険の他に、地方自治体の助成制度もある
バリアフリーリフォーム工事に対する補助金制度は、介護保険の助成制度以外にも各市町村で、それぞれ独自に設けている場合があります。リフォームを検討する際には、自治体の窓口に問い合わせましょう。抽選や先着順の場合もあるため、思い立ったらすぐ相談することをおすすめします。
バリアフリーリフォームの補助金が適用される工事の種類
手すりの設置
転倒防止、移動や動作をスムーズにするための補助を目的にした手すりの設置です。玄関から道路までのスロープ横に転倒防止のために取り付ける手すり、玄関土間から“上がりかまち”への昇降をスムーズにするための手すり、トイレの立ち座りを補助する手すりなどがあります。そのほか浴室や廊下などへの設置が考えられます。
段差の解消
浴室と脱衣所、トイレと廊下など、住宅内の個室間にある段差、玄関から道路までの通路に存在する段差などを解消する目的で行われる工事です。敷居を低くする、スロープを設置する、床をかさ上げするなどの方法があります。
床や通路の素材変更
床や通路を滑りにくい床材へ変更する工事や、移動をスムーズにすることを目的とした素材の変更工事です。畳をフローリングへ変更したり、浴室を滑りにくい床材へ変更したり、玄関から道路までの通路を滑りにくい舗装材にするなどです。
とびらの変更
開閉時に外側の人に当たる可能性がある開き戸から引き戸、折れ戸、アコーディオンカーテンへの変更です。またドアノブを扱いやすいレバーハンドルへ交換する、扉の開閉をなめらかにするための戸車を設置するといったことも対象となります。
便器の変更
和式便器から洋式便器への変更や、洋式便器の接地面をかさ上げする工事です。高齢者は特に、和式便器で体勢を維持することが困難であり、身体への負担も大きいため、座って用を足せる洋式便器への変更が対象となっています。和式便器から洋式暖房便座、洗浄機能付き便座への変更も可能です。
その他関連工事
補助金が適用されるリフォームに伴って必要となる付帯工事についても、補助金の支給対象となる場合があります。手すりやとびらの取り替えに伴う壁の補強、柱の改修、床材変更に伴う下地工事、浴室の段差解消に伴う排水設備工事などです。
バリアフリーリフォーム補助金申請から受給までの流れ
要介護認定の申請をする
バリアフリーリフォームをするにあたって、介護保険の補助金を受け取るためには、リフォームをする家に住む人の誰かが要支援、要介護のいずれかに認定される必要があります。まずは市役所など、介護保険を扱うところへ介護認定の申請をしましょう。本人だけでなく、家族やケアマネージャーが代行で申請することも可能です。
工事の準備をする
要支援、または要介護認定を受けたら、いよいよ具体的な工事の計画に入ります。ケアプラン作成のためのケアマネージャーを選びましょう。ケアマネージャーに相談しながら工事の範囲を決め、理由書を作成してもらいます。また施工業者へ見積書の作成も同時に依頼します。
理由書の作成はケアマネージャーのほか、作業療法士や福祉住環境コーディネーター2級以上の有資格者でも可能です。
事前申請をする
工事に必要な準備が整ったら、着工前に必要な書類を役所へ提出し、事前申請を受ける必要があります。必要な書類は事前確認書、ケアマネージャーなどが作成する改修が必要な理由書、工事の見積書、工事前の写真、などです。
改修工事開始、完成へ
改修工事の着工は、事前申請の許可がおりてからです。許可前に着工したり、事前申請をせずに工事をしたりすると、補助金は支払われないため注意が必要です。
無事、改修工事が終わると支払いを済ませます。工事代金は、一旦全額立て替える必要があります。ただし受領委任払いを実施している地域では、自己負担分を支払うか全額払うかを選択できます。
補助金の支給申請をする
改修工事が完了したら、役所へ支給申請をし、補助金を請求します。必要な書類は支給申請書、工事費内訳書、工事後の写真、領収書などです。領収書の宛名は介護認定を受けた本人のものでなければなりません。
補助金の受給
支給申請をすると、その後指定の口座に補助金が振り込まれます。申請してから振り込まれるまで1ヶ月ほどかかります。受領委任払いを選択した場合は、業者へ補助金が支払われます。
バリアフリーリフォーム減税

バリアフリーリフォームを行うと、条件を満たせば減税される税金の優遇制度があります。減税されるのは所得税と固定資産税です。
所得税の減税は、支払った所得税から一定額を還付される形で受けられます。ただし控除を受けるには、確定申告が必要です。工事代金を現金で払うか、ローンを組むかによって、受けられる控除額や控除期間が異なりますが、いずれにしても対象となるバリアフリーリフォームを行った場合には還付金を受け取ることができます。
また、固定資産の場合は、市区町村に申告することで、工事完了の翌年分の税金が安くなります。確定申告とは別の申告となるので注意しましょう。
所得税の控除は3種類ある
耐震リフォーム、省エネリフォームと同様に、バリアフリーリフォームでも所得税の還付が受けられます。減税には「投資型減税」「ローン型減税」「住宅ローン減税」があり、どの減税を受けられるかは工事費の支払い方法によって決まります。
【1つ目】投資型減税
投資型減税とは、一定のバリアフリー改修工事を行い、その代金を現金で支払った者が受けられる優遇税制です。対象となるのは手すりの取り付け、通路の拡幅、段差の解消などです。平成29年12月31日までにリフォーム後の居住を開始することで、控除対象額200万円を限度とし、1年間のみ10%が控除されます。
<投資型減税を受ける条件>
- 50歳以上
- 介護認定を受けている本人もしくは同居の親族
- 床面積が50㎡以上の家屋
- 補助金などを除く自己負担額が50万円以上であること など
納税地の所轄税務署で確定申告を行い手続きします。
【2つ目】ローン型減税とは
ローン型減税とは、一定のバリアフリー改修工事を借入金で行った者が受けられる優遇税制です。平成29年12月31日までにリフォーム後の居住を開始した場合、年末のローン残高を上限に工事代金の2%、または1%の控除を受けることができます。期間は最大で5年間です。
<ローン型減税を受ける条件>
- 返済期間が5年以上の住宅ローンを組んでいる
- 50歳以上
- 介護認定を受けている本人もしくは同居の親族
- 補助金などを除く自己負担額が50万円以上であること
- 所得が3,000万円以下 など
納税地の所轄税務署で確定申告を行い手続きします。
【3つ目】住宅ローン減税とは
住宅ローン減税とは、住宅の増改築などを行い、その費用を借入で賄った場合に年末ローン残高の1%が控除される優遇税制です。返済期間が10年以上のローンが対象であり、控除対象の限度額は4,000万円です。平成29年12月31までにリフォーム後の居住を開始することが条件となります。控除期間は最大で10年間です。
<住宅ローン減税を受ける条件>
- 保有している住宅で居住していること
- 増改築後の床面積が50㎡以上
- 補助金などを差し引いた自己負担額が100万円以上の工事
- 所得が3,000万円以下 など
手続きは、納税地の所轄税務署に確定申告をすることで行います。
固定資産税の減額
固定資産税の減額は、要件を満たしたバリアフリーリフォームを行った住宅の固定資産税を、工事の翌年1年間に限り3分の1減額する、というものです。
<住宅ローン減税を受ける条件>
- 工事費用が50万円以上
- 賃貸住宅ではないこと
- 工事時期が平成28年3月31日まで
- 65歳以上の者、要介護、要支援認定を受けている者、障がい者のいずれかが居住していること など
手続きは、工事完了後3ヶ月以内に市区町村の担当窓口へ申告することで行います。