バリアフリーリフォームのノウハウ

リフォームポイント

箇所別に見るバリアフリーリフォームのポイント

浴室

手すり付き浴槽

ただでさえ滑りやすい浴室では、転倒の原因にもなる段差をなくすことが大切です。段差は身体のバランスを崩しやすく、将来的に車椅子が必要になった際にも邪魔になります。入口から段差なく入れるようにしておくと安心です。

また車椅子のままで入る場合や介護者が一緒に入る場合のことを考えて、入口はなるべく幅を広くしておくと良いでしょう。スペースを有効利用できる引き戸が適しています。もちろん滑りにくい床材を選ぶことも大切です。石鹸などで特に滑りやすい場所ですので、滑りにくい加工がされたタイルなどを選ぶようにしましょう。

浴槽は大きすぎず小さすぎず、深すぎないものを選びます。深すぎるとまたぎ高さが高くなり、身体のバランスを取りにくくなります。浴室での出入り、洗い場の立ち座りの補助となる手すりも欠かせません。

ヒートショック対策も重要

家庭内事故が浴室で多く起こる原因は、もちろん転倒しやすいこともありますが、気温差も大きな要因となっています。冬の入浴では暖かい部屋から寒い浴室へ移動し、熱い湯船に浸かる、というパターンになりがちです。このような急激な温度変化は身体に大きな負担をかけます。高齢者にとっては命に関わることも。

ヒートショック予防では、部屋と浴室の温度差をなくすことが重要です。浴室暖房を設置するとともに、浴室内の床材は冷たくなりにくいものを選ぶようにしましょう。部屋ごとに温度調整するのではなく、家の中を丸ごと一定の温度に保つ全室暖房の導入も有効な手段です。

洗面所

洗面所のバリアフリーリフォームでは、よく使う洗面台の使い勝手がポイントとなります。

立って使うことを前提につくられていることが多いですが、椅子や車椅子に座っても使えるよう、洗面台の下に足を入れられるだけのスペースが確保されているものが最適です。向きや高さなどに配慮できるよう、高さを調整できる洗面台を選ぶとより使い勝手がよくなります。

出入り口は車椅子でも楽に出入りができるよう、幅を広めに確保しておきます。また洗面台横に手すりを設置し、椅子を使う人の安全を確保します。

水しぶきが飛ぶことが多い床面は濡れても滑りにくい素材を選びましょう。センサーで感知して水を出す自動水栓は、水の止め忘れの心配がなく安心です。

洗面所も脱衣所も兼ねている場合は室温にも注意!

洗面所が脱衣所も兼ねているご家庭では、洗面所で服を脱ぐことになるため、温度にも注意が必要です。居室や浴室との温度差があるとヒートショックの危険が増します。洗面所に暖房機をつけるなどのリフォームが重要です。

トイレ

高齢者はトイレに行く頻度が高くなるため、高齢者の寝室の近くに設置することが望ましいでしょう。できる限り直線的なルートでトイレに行けるよう配慮することも大切です。

出入り口は車椅子や介護の可能性を考え、広めに確保した上で引き戸にすることをおすすめします。特に内側に開くとびらは、トイレ内が狭くなるだけでなく、中で人が倒れた時に外から開けられなくなる恐れがあるため不向きです。同時に車椅子での出入りができるように段差をなくしておけば、転倒防止にもつながります。

トイレの中は、介護者が一緒に入っても無理な姿勢にならないよう、充分なスペースを確保しておきましょう。和式便器は立ち座り動作による身体への負担が大きいため、洋式便器に変更します。便座の立ち座りを補助する手すりの設置も欠かせません。

また、温度のバリアフリーも忘れてはいけません。トイレは日当たりが悪い場所に設置してあることが多く、浴室などと同様に冬場はヒートショックによる健康被害の危険が高い場所です。暖房設備の設置や断熱性の強化などで、住まいの中に大きな温度差をつくらないよう対策をしましょう。

玄関

転倒防止のための手すり

玄関のバリアフリーリフォームのポイントは、家全体の調和を乱さず、最大限の安全に配慮することです。玄関、アプローチには実に多くの危険が潜んでいるので、1つずつ解消していきましょう。

まずは段差の解消です。最も大きな段差は三和土から上がりかまちの段差で、ほとんどの家庭にあります。30cm以上の段差になっていることも少なくありません。三和土と上がりかまちを完全にフラットにしてしまうのが一番安全ですが、それが難しい場合は1つの段差が15cm以下になるよう、踏み台などを設置します。同時に転倒防止のための手すりも設置しましょう。

スロープの設置は車椅子の人にも安心ですが、傾斜が急になりすぎるとかえって危険ですので、段差解消機などの設置を検討すると良いでしょう。

玄関やアプローチは雨で濡れることも多く、滑りにくい素材にすることが重要です。表面がザラザラした素材を選ぶと良いでしょう。また足元が暗いとつまずきや転倒の危険が増します。人感センサーや、暗くなると自動的に点灯する照明などを設置すると安心です。

廊下

廊下はリビングからトイレ、トイレから浴室、といった部屋の移動に使うので、必ず手すりを取り付けるようにしましょう。主に、使う人の身長に合わせて高さを決めます。途切れずに設置することも大切です。部屋との境目に段差がある場合は、ミニスロープをつけるなどして解消しましょう。スロープでは傾斜が急になりすぎる場合は、低いほうの床を嵩上げしてフラットにします。

靴下で歩くと滑りやすいようなツルツルした床材の場合は、ノンスリップ加工された滑りにくい床材へと変更しましょう。また日当たりが悪く暗くなりがちな廊下には、足元灯を設置して明るさを保つことも大切です。暗い廊下はつまずきや転倒の危険があります。

階段

転落の危険がある階段は、安全性を第一に考えたバリアフリーリフォームをすることが重要です。

直線階段は、万が一足を踏み外した時に一番下まで転落してしまう可能性があるため、真ん中で折り返して踊り場を確保できるU型階段が形状としては理想です。踏み面は幅広に、蹴り上げは低くして踏み外しの危険性を少なくしましょう。手すりはできるだけ両側に途切れず設置します。

暗い階段も踏み外しの危険性が増します。夜中にスイッチを手探りするのも危険ですので、足元に常夜灯を設置すると安心です。階段昇降機を設置するのも転落の危険性を軽減する方法として有効です。高齢になると階段の昇降は想像以上に負担が大きいため、選択肢の一つとして検討するとよいでしょう。

部屋

家の中で特に多くの時間を過ごすことになるリビングや寝室といったメインの部屋のバリアフリーリフォームでは、段差の解消や手すりの取り付けはもちろんのこと、快適性を重視することがポイントです。

段差をなくしておくと、将来車椅子の必要が出てきた時にもそのまま利用できます。手すりはリビングならテーブル横や出入口付近に、寝室ならベッドサイドなどに取り付けると良いでしょう。

床は将来、車椅子になった時にも使えるような床材、滑りにくい仕様のものを選ぶのがベストです。リビングの寛ぎスペースを中心に床暖房を導入するとヒートショック対策にもなります。また寝室とリビングは行き来がしやすいよう、同じフロアの近い場所になるようレイアウトを考えましょう。風呂、トイレもできるだけ寝室に近いほうが安全です。

高齢になると、寝室でほぼ寝たきりになる可能性もあります。その際に介護がしやすいよう、入口やベッドまわりには充分なスペースを確保しましょう。寝室に限らず部屋の出入口は引き戸がおすすめです。介護や車椅子に必要なスペースを確保でき、開閉の際にぶつかるリスクを回避することができます。

キッチン

調理をする場所であるキッチンのバリアフリーリフォームでは、楽に調理ができて、火災などへの配慮を忘れないことがポイントになります。快適性と安全性を重視して考えていきましょう。

キッチンは座って調理ができる環境づくりがおすすめです。長時間立って調理をすることは、足腰に負担がかかるため、高齢になると難しくなってきます。足元にスペースを確保し、椅子に座って調理ができるようにすると、将来車椅子が必要になった時にも安心です。同時に車椅子での移動が楽にできるよう、通路などの幅を広くしておきましょう。

食器洗い乾燥機は、足腰への負担が大きい食器洗いの負担を軽減してくれます。バリアフリーの観点からは、あると望ましい設備です。

また収納の見直しも欠かせません。キッチンは収納すべきものが多く、高い戸棚を活用することも多いですが、踏み台などを使うと転倒の危険が増します。手の届く場所に収納スペースを増やすとともに、リモコンで昇降する電動収納棚などを検討しましょう。

濡れやすいキッチンの床材は、濡れても滑らない素材が適しています。IHクッキングヒーターは炎が出ないため、火事のリスクを大幅に軽減。ガスコンロからの入れ替えも視野に入れると良いでしょう。