バリアフリーリフォームのノウハウ

リフォームポイント

外構・玄関アプローチにスロープを取り付けられる?費用と注意点

バリアフリーの考えは世の中に浸透しています。建物の設計や街づくり等をする際は、段差がない、手すりの設置、エレベーターの設置、音声アナウンス等人に優しい設計がされ、ひと昔前と比較すると街中のバリアフリー化(段差の解消)は進んでいます。

一方、戸建住宅はどうでしょうか?例えば30年前に戸建住宅を購入し、現在60歳を越えた居住者にとって、玄関先はバリアフリーとはなっておらず、道路から階段で上がるようになっているのが実状ではないでしょうか。足腰の衰えや車椅子生活になった場合、階段では非常につらいものです。

では、戸建住宅の外構・玄関アプローチに後付けでスロープを取り付けられるのでしょうか?答えは「可能」です。ただし、適切なスロープを取り付けられるかどうかは個別の条件によります。

そこで今回は、戸建て住宅の外構・玄関アプローチにスロープを取り付ける場合の注意点についてご紹介いたします。

外構・玄関アプローチにスロープを取り付けられない場合

スロープを取り付けられない場合とは、ズバリ、「スペースがない」場合です。例えば、道路から階段を2~3段上がってすぐ玄関の様な、道路と玄関が近接している場合です。

その様な場合は、敷地内にスロープを取り付ける事ができません。ですので、鋼板等でできたスロープを必要な時だけ玄関と道路に掛け渡して使用するのがよいでしょう。よく路線バスで車椅子のお客様が乗降する際に運転手がバスと歩道に掛け渡しますが、それと同じです。これであれば、数万円で市販されています。

スロープを取り付けるのに適した勾配

バリアフリーを促進する源であるバリアフリー法ではスロープの勾配は以下の様になっています。

  • 屋内での勾配は「1/12(12分の1)」を超えないこと。
  • 屋外での勾配は「1/15(15分の1)」を超えないこと。

これは車椅子での移動のしやすさを前提に考えられているようです。つまり、1/15以下の勾配だと車椅子でも自走しやすいという事です。また、幅は150cm以上が望ましいとなっています。

では、1/15の勾配とはどんな勾配でしょうか?それは1mの高低差を水平距離15mかけて登るという事です。50cmの高低差なら7.5mとなります。戸建て玄関は通常道路より高くなっていますので、道路から玄関までの高低差×15だけの水平距離を取る必要があります。

ただ、車椅子ではなく、ベビーカーや自転車だけの使用なら車椅子よりも急勾配の1/8以下程度でもよいでしょう。

スロープを取り付けるときの注意点

設置のためのスペースが必要

適切な勾配とするためには、結構距離が長いスロープとなりますし、幅も必要です。したがって、スロープを取り付けるためには、道路から玄関まである程度まとまったスペースが必要となります。

例えば、玄関が道路から50cm上がっている場合、その15倍の長さ7.5m×幅1.5mのスペース。スロープを折り返しとする場合は、折り返す部分は平らな踊り場とする必要があるので、長さ5m×幅3mはスペースが必要となります。スペースが不足している場合は、1/15より急勾配となるので、車椅子の自走には厳しいがベビーカー使用であれば大丈夫等、用途と相談しながら勾配を決める事となります。

スロープ床は滑りにくい素材にする

スロープの床は、スロープ用の凹凸のあるタイルや、ノンスリップシート、コンクリート刷毛引き仕上げ等の滑りにくい上げにする必要があります。

手すりの設置、脱輪を防ぐ工夫をする

スロープの左右端部は、車椅子が脱輪しないように、5cm程度立ち上げを設ける事をおすすめします。当然ですが、手すりは必須であり、必要なスロープ幅を邪魔せず、車椅子でもつかみやすい高さに設置しましょう。

スロープを取り付ける費用相場

スロープの取り付ける費用は手すり込みで、約50万円程度が相場です。しかし、スロープを取り付けるスペースを確保するために、塀や外構を壊して改修する必要がある場合は、別途約10万円~20万円程度必要となります。

スロープの他に配慮しておきたい事

夜間にスロープを照らす

スロープにフットライトを埋め込んだり、あるいは外構にライトを設けてスロープを照らせば、夜間のスロープ利用でも安心です。ライトは人感センサーやタイマーにするとなお便利です。

スロープを設置した後のインターホンや新聞ポストなどの位置

スロープを設けることにより日常の動線が変わる場合には、インターホンや新聞ポスト等の位置変更も考慮しましょう。

スロープと同時に玄関ドアを引き戸にすると利便性が向上

玄関ドアは開き戸から引き戸に変更すれば使い勝手が非常に向上します。玄関ドアのカードキーやノンタッチキーも便利です。

スロープの設置は自治体から補助金が支給されるかもしれません

高齢者や障害者の自宅改修でバリアフリーリフォームをする場合に、自治体から補助金を受け取ることができる場合があります。スロープの設置はバリアフリーリフォームの一環ですので、補助金を受けられるかもしれません。設置前には自治体に確認してみると良いでしょう。

まとめ

高齢者が増えている現在、バリアフリーリフォームは当たり前になっています。その中でも、戸建て住戸の玄関先にスロープを取り付けたいというニーズも多くなっています。工事予算は約50万円~を見込んでおくのがよいと思います。適正で使いやすいスロープ計画となるように、業者の方とよく相談して決めましょう。