防音・遮音リフォームのノウハウ

リフォームポイント

床の防音対策の方法を紹介

ピアノ

集合住宅での騒音トラブルの大半は、上階から階下へ伝わる音が原因です。床を隔てて上下に人が生活する構造である以上、物音が伝わるのは当然のことであり、音を立てずに生活をすることは不可能です。しかしトラブルを避けるために音が伝わりにくくすることは可能であり、最も音を伝えやすい床に防音対策を施すことが有効な手段です。

音にはさまざまな種類があり、伝わり方も違います。生活音で多いのは足音、椅子を引く音、ものを引きずる音、何かを床に落とした音、洗濯機や掃除機の音などです。床から伝わる衝撃音には軽量床衝撃音と、重量床衝撃音があります。

防音対策として、遮音性能の優れた床材へ変更するなどの方法がありますが、集合住宅の場合、できるリフォームの範囲や遮音等級などが定められていることが多いので事前に確認をしましょう。

敷物を使った防音対策

本格的な防音リフォームを考える前に、まずは手軽にできる床の防音対策について考えてみましょう。一番簡単な防音対策として挙げられるのは、音を吸収してくれる素材を床に敷くことです。

防音カーペット・ラグ

手軽に行える床の防音対策として、カーペットやラグを敷く方法があります。音を吸収し、階下に伝える騒音を軽減します。部屋全体に敷き詰めても良いですし、カーペットタイルを防音したい部分にだけ敷くのも良いでしょう。

普通のカーペットやラグでもフローリングよりは防音できますが、遮音性を高めた防音カーペットや防音ラグにすればさらに高い防音効果が期待できます。裏面に硬質ウレタン製のクッション層などが取り付けられた遮音性に優れたカーペット、ボリュームを出すことで防音性を高めた防音ラグ、三重バッキング構造の防音タイルカーペットなどがあります。

タイルカーペットは40~50cm角程度の正方形のカーペットを何枚か並べて使う敷物です。部分的な使い方ができ、裏面が塩ビ加工されているなど、防音性や耐久性に優れています。

防音マット・防音シート

床材用の敷物としてマットやシートがありますが、より防音・遮音効果の高いマット、シートも存在します。一般的なマット、シートでも防音効果はありますが、楽器の演奏やダンスなど、振動を伴う騒音には防音・遮音仕様のものを選ぶと効果的です。

マットは大抵ゴム製で、隙間がない分、カーペットよりも防音効果が高い敷物です。防音対策に有効なマットは厚みのあるタイプで2cmほどのものもあります。隙間から漏れる音を防ぐため、部屋中に隙間なく敷き詰めるとより効果的です。

防音・遮音シートは、壁やドアに直接貼ったり、防音マットと併用して床に敷いたりする薄いシートです。樹脂製や、ゴムマットに不織布を張ったものが一般的です。単体で振動を伴うような騒音を大きく軽減することはできませんが、建物を伝わる音は軽減でき、床にはカーペットやマットと併用することで防音効果を向上させることができます。

フローリング材を使った防音対策

遮音フローリング材とは、設置面側に弾力のある発泡体などをつけることで軽量床衝撃音を軽減することができる床材です。足触りはフカフカしており、どれだけ衝撃音を低減できるかは、性能表示によって知ることができます。表示方法は従来LL、LHと数字を組み合わせてきましたが、新しい表示方法ではΔLL、ΔLHと等級区分を組み合わせて使われています。

LLとはスプーンを床に落とした時に発生する軽い金属音などを表す軽量床衝撃音に対する表示、LHは足音のようにドスンドスンといった重くて鈍い音を表す重量床衝撃音に対する表示です。直張りタイプの防音フローリングは、主に軽量床衝撃音を軽減する目的で開発されています。

L等級とΔL等級の違い

L等級とは、床衝撃音をどれだけ軽減できるかを表す防音性能の単位です。LL-45などと表示され、数値が小さいほど遮音性能が高いことを表します。つまりLL-45よりもLL-40のほうが防音性に優れている、ということになります。

従来はL等級での表示がされてきましたが、新しいΔL(デルタエル)等級という表示方法に順次変わりつつあります。ΔL等級はΔL-2等級などと表示され、この場合は数字が大きいほど防音性能が高いということになります。現在は両方表示されていることが多いので、間違えないように注意しましょう。

下地材を使った防音対策

床の仕上げ材の下に防音効果の高い下地材を施し、防音性を高めるリフォームもあります。防音下地材を使う場合、床の構造によって適した素材や工法が異なります。

下張り(捨て張り)工法

下張り(捨て張り)工法とは、主に戸建て木造住宅の床で用いられる工法で、根太といわれる角材と仕上げ材である床材の間に合板などを下貼りする施工方法です。構造が安定し、床下からの湿気を防ぐことから、最近の木造戸建て住宅では最も一般的な工法です。

床の防音性能を高めたい場合は、床材と下地材の間に遮音材を敷設する方法があります。敷設する遮音材には遮音マット、インシュレーションボードと制振マットが一体化したものなどがあります。

根太(張り)工法

根太(張り)工法とは、根太の上に接着剤と釘を使って床材を施工する方法です。下張り材がない方法ですが、以前の木造戸建て住宅では一般的な工法でした。

防音性能を高めるには、新たに下張り材と遮音材を敷設するほか、下張り材と遮音マットが一体化したものを敷設する方法があります。同時に根太の間も吸音材で埋めるのが望ましいでしょう。

直貼り工法

直貼り工法とは、主に集合住宅の床で用いられる工法で、コンクリートスラブの上に直接床材やカーペットを張る方法です。スラブが薄いと階下に足音が響くため、遮音性を重視したマンションなどではあまり採用されていません。

防音性を高めるには、仕上げ材を防音性の高いカーペットやクッション材にする、フローリングの下にクッション材を張る、などの方法があります。

二重床工法

二重床工法とは、主にコンクリートスラブの上にベースとなるパネルとそれを支える支持脚を設置し、その上に床材を施工する方法です。配線や配管機能を床下に持たせることができます。

防音性能を高めるには、スラブとパネルの間を吸音材などで埋め、仕上げ材の下に遮音マットを敷設するなどの方法があります。重量床衝撃音にも効果がある方法です。