
基礎知識
自然塗料の種類をご紹介
公開日:2019年06月13日
自然塗料とは

自然塗料とは、植物性油などの天然素材を主な原料としている塗料のことです。
全体の何割以上が天然素材、という明確な基準はなく定義は曖昧です。すべての製品が100%天然素材でできていると思われがちですが、化学物質が全く入っていないとは限りません。中には少量の化学物質が含まれているものもあります。
たとえ100%天然素材であったとしても、乾燥の過程で化学反応を起こし、微量ながら有害な物質を放出する可能性はあります。ただ合成塗料に比べ、安全性が高いことは確かです。
自然塗料のメリット・デメリット
メリット
自然塗料のメリットは、環境負荷が少ないことです。材料の調達から使用、廃棄にいたるまで有害な化学物質の発生が少なく、環境に優しい塗料です。アレルギーやシックハウス症候群の原因物質となる有害な成分「臭い」が少ないため、人にも優しい塗料です。
また、素材の性質を生かしたナチュラルな仕上がりになり、風合いを楽しむことができます。木材に塗る場合は浸透し、表面に膜を張らないため、木が持っている調湿機能を生かすことができるのも大きなメリットと言えるでしょう。
デメリット
一方でデメリットは耐候性に劣ることです。素材が持つ防カビ、防腐成分はありますが、化学成分に比べるとその機能は劣ります。そのためメンテナンスも頻繁に行わなければならず、お手入れが少々面倒です。
また乾燥に時間がかかるため、塗装作業に時間がかかるというデメリットもあります。さらには原料となる天然素材が貴重なものや、調達、製品化に時間と手間がかかるものもあり、作業の手間と併せて施工費が高くなる傾向があります。
自然塗料の種類
自然塗料には、素材に浸透して保護するタイプ、膜をつくって保護するタイプなどがあります。植物・樹木・昆虫などから取れる油が原料です。
オイル系自然塗料
オイル系自然塗料とは、植物性オイルを主成分とする塗料のことです。木材に深く浸透して質感を残しつつ保護するタイプの塗料で、代表的な自然塗料といえます。単独で使えるものもありますが、溶剤で薄めたり、いくつかのオイルを混ぜたり、顔料や染料を混ぜたものもあります。主成分が植物性オイルであるというだけで、100%植物由来とは限りません。
植物性オイルには空気中で完全に固まる乾性油、完全には固まらない半乾性油、全く固まらない不乾性油があります。半乾性油や不乾性油も塗料として使えないわけではありませんが、混ぜ物をせず塗料にする場合は乾性油を使います。代表的な乾性油は桐油、荏油、胡桃油、亜麻仁油などです。
ただし、乾性油であっても、オイル系は乾燥に時間がかかるため、乾燥時間を短くしたり塗りやすくしたりするために溶剤や他のオイルを混ぜることがあります。
ワニス系自然塗料
ワニス系自然塗料とは、コハクやコーパル、ロジン、セラック、ダンマルなどの天然樹脂を主成分に乾性油や溶剤などを混合した塗料です。
透明で硬いのが特徴で、単にニスと呼ばれることもあります。乾く速さは混ぜる油の種類や量によって異なります。塗膜をつくり、耐水性に優れているのが特徴です。アルコール類を溶剤として用いたワニスは速乾性があり、刷毛塗りが容易であるため使い勝手が良く、木材に広く使われています。
漆の木の樹液を主成分とした塗料もワニスの一種です。乾燥に時間はかかりますが、一旦固まると酸やアルカリといった薬品にも高熱にも強い耐性があります。光沢が美しい漆塗りは、工芸品や工業製品など様々な分野で採用されています。
ワックス系自然塗料
ワックス系自然塗料とは、蝋を主成分とした塗料のことで、蜜蝋、カルナバ蝋、キャンデリラ蝋などの種類があります。単独で使うこともありますが、表面にとどまる性質があるため表面保護を目的に艶出しとして仕上げに使われることが多い塗料です。100%蝋を原料としたものもあれば、オイルなどと混ぜ合わせて使いやすくしたものもあります。サラリとした仕上がりが特徴です。
蜜蝋はミツバチが分泌する蝋のことで、耐久性、乳化性、防湿、防水にも優れています。防腐性にも優れていますので壁画の保存にも使われていました。塗料としては表面に薄い皮膜をつくるため、湿気や汚れから素材を守り、長持ちさせると同時に艶出しの効果もあります。
カルナバ蝋はカルナバ椰子の葉から、キャンデリラ蝋はトウダイグサ科の植物から抽出する植物性です。人畜無害で、化粧品などで使われることでも知られています。
柿渋
柿渋とはまだ熟す前の柿、つまり渋柿の実を砕いて発酵させたものを主成分とする塗料です。そのまま、あるいは顔料と混ぜ合わせて使いますが、顔料も天然素材である必要があります。化学物質などを混ぜることができないため、柿渋塗料は完全な天然素材といえます。
柿渋に含まれる柿タンニンという成分には防水、防虫、防腐効果があり、和傘にも使われています。同じく天然塗料である漆が高価であるため、代用品としても使われてきました。柿タンニンの発色により、色は茶系です。塗装回数によって、色の濃淡を調節し色付けすることができます。
またペクチンという成分には接着性があり、次第に不溶化していく性質を持っています。そのため、塗布した素材を丈夫にする効果があります。