自然素材リフォームのノウハウ

基礎知識

自然素材の塗り壁の種類とメンテナンス方法

塗り壁とは

塗り壁

塗り壁とは、土や植物などの天然素材を主な原料とする壁材のことです。下地の上に中塗り、上塗りと何層にも塗って仕上げる壁であり、昔多くいた左官と呼ばれる職人が手仕事で仕上げることから左官工法、左官仕上げ壁、と呼ばれることもあります。またビニルクロスや紙クロスの乾式に対し、乾燥に時間がかかることから湿式工法とも呼ばれます。

天然素材には調湿機能が備わっており、地球環境にも優しいことから、近年改めて注目が集まっています。最後の上塗りに使う素材によっていくつかの種類に分けられ、土壁、漆喰壁、珪藻土などがあります。

塗り壁のメリット

塗り壁の最大のメリットは、健康的な生活を送れることです。多くの塗り壁には人体に有害な化学物質を吸収し、空気を浄化する性質をもっています。吸湿性にも優れており、アレルギーの原因となるカビやダニの発生を抑えます。悪臭を吸着・分解する機能も備わっており、健康的で快適な室内環境を実現できます。

また、もともと自然素材である塗り壁は、人だけでなく地球環境にも優しい壁材です。施工時にも解体後も有害物質や廃材をほとんど排出せず、環境に負荷をかけることなく最後は自然に還ります。

左官職人が丁寧に仕上げる質感と、味わい深い表情もまたメリットの1つといえるでしょう。

塗り壁のデメリット

塗り壁のデメリットは、施工費用が高くなりやすいことです。左官職人がコテを使って手作業で塗ることに加え、乾燥なども含めると施工に時間がかかります。使う素材によっては材料費も高く、クロス張りに比べると施工費が高額になる傾向があります。

また乾燥の過程で収縮によってヒビが入ることがあります。工業品に比べると塗りムラ、色ムラが出やすいのも弱点です。施工後は掃除がしにくい、汚れが落ちにくい、といった点も受け入れなければなりません。

自然素材の塗り壁の種類

土もの・土壁

土もの・土壁とは土を使用してつくられる塗り壁材の総称で、和室によく使われます。表面がきめの細かい砂壁状仕上げの聚楽壁、石灰に色土とすさを混ぜた大津壁などがあります。

自然素材である土には調湿効果があるため、夏の蒸し暑さを軽減し、冬は乾燥を防ぐため暖かく感じます。蓄熱効果により結露が発生しにくく、防カビ・防ダニにも優れています。また内部に空洞が少なく重量があるため、防火性能、防音性能にも優れています。

珪藻土

珪藻土とは、海や湖に生息していた植物プランクトンの死骸が堆積してできた土を主な原料とする塗り壁材です。

粒子の中に無数の空気層を持ち、この空気層には水分を取り込むこともできます。そのため湿気の多い夏には水分を吸収し、空気が乾燥する冬は吐き出す調湿機能を備えています。余分な水分を吸収し、結露やカビの発生を軽減できます。

空気層は保温や断熱の機能も果たしています。快適な室内環境を保ち、冷暖房による電気代の削減や省エネが可能です。音を遮る力があり、遮音や防音の効果にも期待できます。また珪藻土には臭いの成分や有害物質を吸着し、空気をキレイにしてくれます。

漆喰

漆喰壁

漆喰とは石灰を主な原料とする塗り壁材のことです。石灰は白ですが、砂や糊、天然顔料などを混ぜて使うため、カラーバリエーションが豊富で高級感があります。

強アルカリ性で調湿性に優れているため、カビがつきにくく、結露や細菌の発生を抑える働きがあります。有害物質を吸収し続ける機能を持ち、シックハウス症候群やアレルギー対策としても有効です。また漆喰には消臭機能があるため、ペットや洗濯物の生乾きの臭い、台所の嫌な臭いを防いでくれます。

漆喰自体に固まる性質があり、塗ってから数年かけてどんどん硬くなります。そのため年月が経つほど丈夫な壁になります。原料が無機物なため燃えることはなく、防火性に優れた建材です。

砂壁

砂壁とは、色砂を主な原料とする塗り壁材のことで、糊と混ぜ合わせて使います。風情があり、滑らかで美しい仕上がりが特徴です。和風建築に多く用いられてきましたが、洋室に合うものも登場しています。

天然砂や石を砕いたもの、それらを着色したもの、あるいは金属粉、貝殻粉などを用いたものなどがあります。混合する糊は海藻類の煮沸液やでん粉糊といった天然由来のもののほか、最近では合成樹脂が使われることもあります。

カラーバリエーションは豊富ですが、混ぜた糊が劣化すると色砂が剥がれやすくなるという弱点があります。

プラスター

プラスターとは、鉱物質の粉末と水を混ぜた塗り壁材のことで、石膏プラスターとドロマイトプラスターの2つに分けることができます。白くて美しい仕上がりが魅力です。

石膏プラスターは石膏を主原料としており、主成分は硫酸カルシウムです。固まりやすい性質があり、塗り作業を素早く行う必要があります。乾燥過程での収縮が少ないためヒビ割れを起こしにくく丈夫です。

ドロマイトプラスターは、白雲石を主原料としており、空気に触れると硬くなる性質があります。「プラスター」というと、一般的にはドロマイトプラスターのことを指します。

線維壁

繊維壁とは、パルプや紙繊維、化学繊維といった繊維質に糊を混ぜ合わせた塗り壁材のことです。調湿性、防音性、断熱性に優れており、現場での作業がしやすいという特徴があります。ソフトな仕上がりで亀裂の少ない壁材ですが、耐久性の低さから現在では徐々に需要が減っています。

塗り壁の素材別のメンテナンス方法

自然素材は、お手入れに手間がかかるといわれていますが、塗り壁ではどのようなメンテナンスが必要か。ここでは、代表的な塗り壁のお手入れ方法についてご紹介します。

土壁・砂壁・線維壁 の場合

土壁は水分を吸収し、シミができやすいため、濡れた雑巾や洗剤を使ったお手入れは適していません。日頃から表面のホコリをハタキなどでマメに落とし、乾拭きをします。

砂壁、繊維壁はシミやカビが発生しやすいため、日頃から清潔な乾燥状態を保つことが大切です。閉め切ったままにせず、時々窓を開けて風通しを良くしましょう。表面の砂や繊維が落ちてきたら、5~10倍程度に薄めた木工用ボンドをスプレーして補修します。

珪藻土の場合

日頃のお手入れは、ハタキなどでホコリを落とすか掃除機で吸い取ります。乾拭き、固く絞った清潔な雑巾で軽く叩くように拭き取るのもよいでしょう。水拭きは表面が削れてしまうこともあるので避けてください。

手垢や鉛筆の汚れは消しゴムで落とせる場合があります。汚れを見つけたら、まず消しゴムを試してみてください。表面の状態が変わる場合があるので、強くこすり過ぎないようにしましょう。

消しゴムで落ちない場合や広い範囲の汚れは、中性洗剤を使います。清潔な柔らかいスポンジか布に少量含ませ、軽く叩くようにして拭き取ります。それでも落ちない場合は、少しだけこする感じで拭くと落としやすくなりますが、こすり過ぎないよう注意が必要です。仕上げに、固く絞った雑巾で表面の洗剤を充分に拭き取っておきましょう。

中性洗剤でも落ちない汚れ、コーヒーや醤油などのシミには漂白剤を使います。水で薄めた漂白剤を清潔な布やタオルなどに含ませ、汚れに塗布します。乾いたら水を含ませたタオルなどで叩くようにして漂白剤と汚れをふき取ります。

漆喰の場合

表面についたホコリはハタキで落とします。

落書きや物がこすれた跡など、表面の汚れは消しゴムで落とせる場合があります。消しゴムで落ちない場合は水拭き、それでも落ちなければサンドペーパーを試します。ただし、こすりすぎると表面が削れてしまいますので要注意です。

コーヒーやマジックなどのシミは、重曹や漂白剤を使います。水で薄め、霧吹きで汚れに吹き付けます。しばらくして乾いた布やタオルなどで押さえます。まずは重曹で試し、落ちなかった部分に漂白剤を使うとよいでしょう。ひっかき傷などは、霧吹きで水をかけて馴染ませるだけで目立たなくなることもあります。

汚れが広範囲にわたっている場合や、ひび割れが出てきているような場合には、市販の水性漆喰を買ってきて塗るのもひとつの手です。広範囲の汚れならローラーや刷毛で塗り、小さなひび割れには歯ブラシでひびを埋めるように塗り込みます。ただし、後から塗った部分と元の壁とで、若干色の差がでることを理解した上で補修してください。