太陽光発電リフォームのノウハウ

基礎知識

太陽電池モジュール(ソーラーパネル)の種類

太陽電池とは、太陽の光エネルギーを電気へと変換する素子のことです。太陽光があたると発電する半導体でつくられています。

現在最も多く使われているシリコン系太陽電池の場合、p型、n型という2つの異なる電気的性質をもった半導体を重ね合わせた構造になっています。太陽光があたると電子(マイナス)はp型側へ、正孔(プラス)はn型側へと引き寄せられ、対極につけた電極に負荷(たとえば電球など)をつなぐと電気が流れるという仕組みです。

太陽電池は、「シリコン系」「化合物系」「有機物系」の3つに分類されます。これらの太陽電池を使ったモジュールには、たくさんの種類がありますが、中でもよく知られているのがシリコン系です。家庭用の太陽光発電では歴史があり、現在でも主流のモジュールとなっています。有機物系は開発が進められている段階ですが、今後の実用化が大きく期待されている太陽電池です。

シリコン系太陽電池モジュール

単結晶シリコン太陽電池

単結晶シリコン太陽電池とは、純度の高い単結晶シリコンを原材料とする太陽電池のことです。太陽電池の中で最も歴史が古く、実績があります。太陽光から電気への変換効率が高く、耐久性があるのが特徴です。シリコンの結晶量が多く純度が高いため、原材料費も製造コストも高くなります。

パネルが高温になると変換効率が落ちる結晶シリコン系太陽電池の中では、その影響が少ないタイプです。高額なため、屋根の形状や面積から設置可能枚数が少ないケースに適しています。

多結晶シリコン太陽電池

多結晶シリコン太陽電池とは、小さな単結晶を集めた多結晶シリコンを原材料とする太陽電池のことです。結晶同士の境目が電子の移動を邪魔するため、単結晶シリコンに比べると5%ほど変換効率が劣ります。しかしながら製造コストが安いため、単結晶よりも安価に太陽光パネルを導入できるメリットがあります。

かつては太陽光パネルの主流であり、累積出荷台数が最も多い実績のある太陽電池です。単結晶に性能面では劣るものの、技術の進歩によりその差は縮まりつつあります。

薄膜シリコン太陽電池

薄膜シリコン太陽電池とは、数μm程度に薄くスライスしたシリコン膜を使った太陽電池のことです。従来の結晶シリコン太陽電池に比べ、シリコンを使う量が1%程度で済むため、低コストで生産できるのがメリットです。

ただし、変換効率は従来の結晶シリコンに比べると劣ります。これをカバーするため、吸収波長の異なる発電層を重ね合わせて複層構造にしたものが開発されています。結晶シリコンはパネルが高温になると変換効率が下がりますが、薄膜シリコンはあまり下がらないため、気温の高い地域では年間を通じてさほど変換効率に差がない可能性があります。

アモルファスシリコン太陽電池

アモルファスシリコン太陽電池とは、非結晶のシリコンを原材料とする太陽電池のことです。結晶シリコンとは素材原子が不規則に配列されている点で異なっており、多くの光を吸収することができます。このため薄膜化が可能であり、薄膜シリコン型太陽電池に分類されます。

薄膜化によって使用するシリコンの量が少なくて済むため、コストを抑えることができ、大量生産が可能であることがメリットです。パネルが高温になっても変換効率が下がりにくい点でも優れていますが、一方で結晶シリコンに比べると変換効率が悪い、太陽光により劣化しやすい、といったデメリットがあります。寿命が短いため、住宅用としては普及していません。

ハイブリッド太陽電池(HIT太陽電池)

ハイブリッド太陽電池(HIT太陽電池)とは、結晶シリコンとアモルファスシリコンを重ねた太陽電池のことです。発電効率が良く、高温でも変換効率が低下しにくい、という結晶シリコンとアモルファスシリコン両方の長所を持っています。変換効率は、住宅用の太陽電池パネルとしては最高水準であり、パネルの枚数を減らせるというメリットがあります。

ただ、ハイブリッド型太陽電池の大きなデメリットは高額であることです。優れた太陽電池ではありますが、出力ベースで比較して最も高額であるため初期費用の回収に時間がかかります。

化合物系太陽電池モジュール

CIS/CIGS

CIS/太陽電池とは、銅、インジウム、セレンを主な原料とする太陽電池モジュールです。これにガリウムを加えたものがCIGSです。シリコンを使用しない化合物系の太陽電池モジュールの中では、住宅用として最も普及しています。

製造コストが抑えられる薄膜タイプで大量生産が可能であること、高温時の出力低下が少ないこと、経年劣化が少ないこと、などが特徴です。

また特筆すべきメリットは影の影響を受けにくいことです。結晶シリコン型の場合は、一部に影がかかるとモジュール全体の出力が下がってしまうという弱点がありますが、CISは影がかかってもその部分の出力が落ちるだけで全体の出力には影響しません。

CdTe太陽電池

CdTe太陽電池とは、カドミウムとテルルの2つの元素を主成分とする半導体からなる太陽電池モジュールのことです。光吸収率が高く、薄膜化が可能です。

人体に有毒であるカドミウムを含んでいることから、現在国内では製造されていません。しかし世界的にみると生産はされており、アメリカやヨーロッパでは便利な太陽電池として使われています。

成膜工程を比較的低温かつ短時間に行なえるため、省エネルギー、低コストで製造できるメリットがあります。また高温時の出力低下が少ないのも長所です。

GaAs太陽電池

GaAs太陽電池とは、単結晶ヒ化ガリウムを原料とする太陽電池モジュールのことです。レアアース(希少な非鉄金属)であるガリウムのみを使用するため、高価であり禁輸などによって価格変動が激しいという欠点があるものの、優れた電気変換効率をもつ太陽電池です。宇宙放射線に対しても劣化が緩やかで、将来的には宇宙での活躍が期待されています。

変換効率が良いため薄膜化も可能ですが、先述のように高価であること、価格変動が激しいことに加え、人体に猛毒のヒ素を含んでいることから、住宅用としては普及していません。

有機物系太陽電池モジュール

有機薄膜太陽電池

有機薄膜太陽電池とは、導電性高分子やフラーレンといった有機半導体の薄膜を利用した太陽電池モジュールのことです。軽量で薄く、柔軟性があるため、架台が不要で湾曲した壁面などへの設置も可能です。デザイン性にも優れており、カーテンやブラインドといったインテリアとしての活用も期待されています。

エネルギー変換効率は10%台と決して高くはありませんが、大面積の太陽電池を低コストで製造できるのが大きなメリットです。軽い、曲がるといった特性は、重さや形状から従来は設置できなかった屋根への設置も可能にします。

色素増感太陽電池

色素増感太陽電池とは、光を吸収する特性をもった色素を使用した太陽電池モジュールのことです。酸化チタンに色素を塗布することで発電させる仕組みです。

エネルギー変換効率を飛躍的に伸ばしたのが1991年であり、太陽電池としては比較的新しいタイプです。安価な材料を使うため低コストで製造でき、使える色素にはたくさんの種類があります。薄く塗布するだけで発電するため、デザインの自由度が高いのが特徴です。

変換効率は高いもので11%ほどと高くはありませんが、研究が進められており、今後向上することが充分に期待できます。