太陽光発電リフォームのノウハウ

リフォームポイント

太陽光発電導入前に知っておくべき5つのこと

太陽光発電は大がかりで複雑な機器であるがゆえ、一般的な家電製品などには無いような特殊なトラブルが起こることがあります。また設置場所や補助金受給後の制約など、比較的制限が多いのも太陽光発電の特徴です。導入した家庭すべてに当てはまることではありませんが、知識として頭に入れておくと、いざという時に落ち着いて対応できるでしょう。

太陽光発電を導入した住宅の売却・引越し

太陽光発電導入に際して補助金を受けている場合は、勝手に売却、譲渡、廃棄などはできません。補助金の一部または全部を返却する必要があります。また太陽光発電システムの法定耐用年数は17年ですが、この17年以内に取り外したり手放したりする場合は、太陽光発電協会(J-PEC)に事前に「財産処分承認申請」を行い、承認を受けなければなりません。

太陽光発電システムを導入した後に引越しをする場合は、太陽光発電を設置したまま住宅を売却するか、引越し先に持っていくか、取り外して廃棄や譲渡をするか、いずれかになります。

設置したまま売却する場合は、次の所有者が電灯契約者になるため、売電費も次の所有者が受け取ります。振込先口座の変更が必要です。また設備の所有者が変わる場合、経済産業省へ軽微変更届を提出します。

引越し先に持っていく場合は引越し先の屋根に設置できることを確認し、再設置となります。取り外した屋根にも補修工事が必要です。引越し先で新たな器具が必要になる場合や、すべてのパネルを使えない場合があります。また移設すると保証の対象外になることがあるため注意が必要です。

売電収入の税金

一般家庭であっても売電収入は売上となり、課税対象となります。課税の対象となるには条件があり、太陽光発電を導入したご家庭すべてに税金が発生するわけではありません。

サラリーマン家庭の場合、給料以外の雑所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になり、課税対象となります。売電収入だけで20万円を超える時はもちろんのこと、売電収入は20万円以下であっても、その他の雑所得合わせて年間20万円を超えた場合は所得税を払わなければなりません。

ただし、導入後17年間は、売電収入から減価償却費として差し引くことができます。減価償却費は、太陽光発電システム設置にかかった費用から補助金などを差し引いて、自己負担したお金を17で割って算出します。多くの場合、売電による利益は減価償却費より少なくなるため、17年の間にはほぼ課税されることはないでしょう。

注意が必要なのは個人事業主など、毎年確定申告をしている人です。20万円以下の雑所得が非課税なのは、年末調整によって税額が決まる給与所得者に限ります。それ以外の人の場合は売電収入の多少に関わらず、すべて申告しなければなりません。

反射光トラブル

太陽光発電を導入すると、パネルからの反射光が眩しい、と近隣トラブルになることが稀にあります。反射光は上に向かいますので、同じような高さの住宅が建ち並ぶ一般的な住宅地ではトラブルになることはほとんどありません。しかし反射光が地上に向かうことがある屋根の北側への設置や、近隣に高い建物がある場合には反射光トラブルに発展する可能性があります。

トラブルを避けるには、まず北側への設置を極力避けること。どうしても設置する場合は周辺に高い建物がなく、今後も建つ予定がない、あるいは反射光が地上に向かって眩しく感じる時間帯、場所がないかどうかをよく確認することが重要です。

自然災害が太陽光パネルに与える影響

通常、太陽光パネルは雷や台風、雹(ひょう)などで壊れる心配はありません。たとえば太陽光パネルに直接雷が落ちることは稀ですが、落雷対策として回路内に誘電雷対策のための避雷素子などが設置されています。落雷による過度な高電圧から保護するため、パワーコンディショナには避雷器が組み込まれています。

台風や強風に対する対策としては、地上15mにおいて秒速60mの風圧に耐えられる設計がされています。秒速60mというと、猛烈な台風と表現される秒速54mよりもさらに強い風速です。相当な風圧にも耐えうると考えて良いでしょう。

またJIS規格に基づき、1mの高さから直径38mm、重さ227gの硬球を落としても耐えられる強化ガラスが使われています。霰(あられ)や雹でパネルが傷つく、割れるといったことはありません。

雪対策

太陽光パネルは降ってもすぐに溶けるような雪、50cm以下の積雪に対しては耐久性があります。ただし豪雪地帯、50cm以上の雪が積もる地域では、雪の重みでパネルが破損する、雪でパネルが隠れて発電ができなくなる、といった危険性があります。またパネルの積雪が一気に落ちて下に置いてある物を壊したり、歩いている人にかかったりするトラブルも考えられます。

パネルの破損や積雪による発電量低下への対策としては、長時間パネルの上に雪を積もらせないよう、パネルに傾斜をつける方法があります。ある程度の傾斜があれば、雪は自らの重みで滑ります。太陽電池の下にテンションバーを入れてパネルを強化するのも有効な手段です。一定の条件になると自動的に雪を溶かす機能がついた製品もあります。

落雪に対しては、雪が落ちる場所を充分考慮して設置することが大切です。雪が落ちる場所に物を置かない、人が通れないようにフェンスで囲う、といった対策があります。屋根やパネルの下に雪止めを設置し、雪が一気に落ちるのを防ぐのも良いでしょう。

塩害対策

沿岸から近い地域では、塩分を含む潮風によってパネルの配線、架台などが錆びやすくなります。また内部機器にも塩分が入り込み、故障の原因となることがあります。

こういった塩害地域に太陽光発電システムを導入する場合は、塩害対策が施されているパネルや架台を使用すると共に、パワーコンディショナや接続箱などの周辺機器は屋内に設置する対策をします。また施工後もメンテナンスをまめに行い、異常にすぐ気がつけるような対策が望まれます。

なお、塩害地域とは海岸から500m以上離れた地域のことで、地域によって1km以内、7km以内などとなっています。沿岸から500m以内は重塩害地域と定義されており、ほとんどのパネルは設置できません。

火山灰対策

近くに活火山がある地域では、火山灰が太陽光パネルにまで降り注ぐ可能性があります。火山灰でパネルが覆われると太陽光をうまく吸収できず、発電量が低下します。売電収入にも影響しますので、定期的に洗浄をすることが大切です。

火山灰は水で流しただけでは綺麗に落ちないため、雨が降ってもパネルに汚れが残っています。屋根にのぼっての洗浄が必要ですが、作業には危険が伴い、パネルを傷つける恐れもあります。パネルの洗浄は専門業者に依頼するのが望ましいでしょう。

電圧上昇制御について

電気は電圧の高いところから低いところへと流れる性質をもっています。太陽光発電システムでは、この性質を利用して売電を行っています。発電した電気の電圧を電力会社送電線の電圧よりも高くして逆流させることで売電する、という仕組みです。

電圧上昇抑制とは、太陽光発電の電圧を送電線の電圧よりも高くすることができず、売電が行えない状態のことです。通常はパワーコンディショナが自動的に送電線よりも高い電圧を維持しようとしますが、電気事業法により定められた電圧よりは高くできないため、電力会社の送電線の電圧が高い時にはそれ以上の電圧を維持することができません。

たとえば、同じ電力回線内に電力使用量が大きい工場などがある場合には、送電線の電圧が高くなることがあります。また太陽光発電システムを導入する住宅が増えることで、電力会社の電気の供給量に対し消費量が少ない状態が続くと同様の現象が起こる可能性があります。

ただし発生頻度は非常に稀で、起こったとしても一時的であることが多いようです。そもそも電圧上昇制御は、設備不良や故障などで起こる現象ではないため完全に防ぐことはできません。太陽光発電を導入するにあたり、知識として「こういう現象もある」ということを覚えておきましょう。