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24時間換気システムを戸建て住宅に後付する際の注意点7つと後付した後の注意点3つ
公開日:2020年01月28日
24時間換気を戸建て住宅に後付けする際、何に注意すればよいのでしょう?
一口に24時間換気と言っても、換気の種類によって特徴が大きく変わってきます。当記事では、24時間換気とは何かを踏まえた上で、換気の種類と特徴、24時間換気を選ぶ際の注意点と設置後の注意点、についてわかりやすくまとめました。
24時間換気とは

※画像は一条工務店のホームページより引用
24時間換気とは、給気や排気に機械を使用し、窓を閉めた状態でも24時間換気を続けるシステムのことを言います。1時間で居室の空気の半分以上を入れ替えられるよう設計されています。あくまで機械を使った強制的な換気を指すので、窓など開口部からの自然換気とは異なります。
24時間換気は建築基準法で義務化されている
24時間換気の設置は、2003年の建築基準法の改定で全ての新築に義務化されました。
近年普及してきた高気密・高断熱住宅は、壁に断熱材を入れて断熱し、防湿シートや気密テープで隙間をふさいで、結露を防いだり気密性を高めたりして断熱性を維持します。ですので、夏は涼しく冬は暖かい省エネルギーの室内環境を実現する反面、隙間の少なさ故に換気が不足しがちになるというデメリットも持ち合わせています。
そのデメリットを解消するため、24時間換気を設置することで換気不足を補いシックハウスを予防しよう、というのが2003年の改定の主旨でした。
24時間換気の効果としては、結露・カビ・ダニの発生抑制、燃焼ガスや呼吸により汚染された室内空気の交換、などが挙げられます。
24時間換気は中古住宅には設置義務がない
24時間換気の設置義務は、中古住宅にはありません。なので、お住まいの戸建て住宅の換気に問題がないなら、(カビや結露がなく、家族にシックハウスの症状がなければ)後付する必要はありません。
高気密高断熱リフォームを検討されている方や、防犯上の理由などであまり窓を開けたくない方などは、後付けを検討された方がよいかもしれません。また、アレルギーをお持ちなら、第1種の24時間換気を設置し高性能フィルターをつけて花粉やほこりの流入を防ぐ、という選択肢もあります。
第1種という言葉を使いましたが、次章で換気の種類と特徴を説明していきます。
24時間換気の種類は3つ
第1種換気(機械給気+機械排気)
第1種換気は、給気と排気の双方をファンなどの機械で行う換気方式です。
室内外の空気の出し入れをコントロールし、安定した換気ができます。また熱交換器を組み込んで冷暖房費を節減したり、高性能フィルターをつけて花粉やPM2.5などを抑制したりする事ができます。主なデメリットとしては、コストが高いことと、メンテナンスに手間がかかることが挙げられます。
天井裏などに設置した大きなファンを各居室とダクトでつないで換気をするダクト式が一般的ですが、ダクト式のデメリットであるメンテナンス性を改善しコストを下げたダクトレスのタイプもあります。ダクト式とダクトレス式は区別して検討する必要があります。
第2種換気(機械給気+自然排気)
第2種排気は、給気は機械で排気は排気口から自然に排気する換気方式です。室内の空気の圧力が外より高い正圧と言われる状態になり、満タンになった空気が排気口から自然に外に押し出されます。
外の汚れた空気が入りにくい為、病院の手術室などで使われます。ただ内部結露を起こしやすいというデメリットがあり、一般住宅で採用されることはまずありません。
第3種換気(自然給気+機械排気)
第3種排気は、給気は給気口からの自然給気、排気はファンなどの機械で行う換気方式です。
各居室に給気口を設け、排気のファンはトイレ・浴室・キッチンの換気扇を使用する形が一般的です。シンプルで低コストの第3種排気は、一番多くの住宅で採用されています。計画的な換気という面では第1種に劣るのですが、メンテナンスをしやすいという大きなメリットがあります。
24時間換気を戸建て住宅に後付する際の注意点7つ
お住まいの住宅に24時間換気を後付けできるか確認しよう
24時間換気を戸建て住宅に後付けする際の注意点の1つ目は、現在のお住まいに後付け工事が可能かどうか確認することです。
概ねは可能ですが、物理的にはつけられても有効な換気がとれない場合もあり、プロの判断が必要です。気密性、換気量、空気の流れ、ダクトスペース、既存穴の状況など考慮し提案をしてくれる業者を探しましょう。
24時間換気を最も有効的に機能させるには住宅自体が高気密・高断熱であることが求められます。リフォームで高気密・高断熱化まで視野に入れるのであれば、かなり大掛かりな工事となります。
お住まいの住宅の気密性について確認しよう
24時間換気を戸建て住宅に後付けする際の注意点の2つ目は、現在のお住まいの気密性を確認することです。気密の低い住宅では、ファン付近の隙間から空気が出入りし狭い範囲での循環となり、新鮮な空気が部屋全体に行きわたらない、という問題が起こります。
このような理由で、気密の低い住宅に第3種換気やダクトレスの第1種換気をつけてもうまく機能しません。C値1以上の住宅にはダクト式の第1種換気をおすすめします。
C値とは隙間相当面積で、低いほど気密性が高いことになります。
参考:業界トップの一条工務店のi-cubeで0.59
住宅購入時の資料を見直したり、住宅会社に問い合わせてみるのもよいでしょう。有料ですが気密検査をしてくれる業者もあります。
24時間換気の第1種と第3種の特徴を理解して選ぼう
24時間換気を戸建て住宅に後付けする際の注意点の3つ目は、第1種と第3種のメリット・デメリットを理解してから選ぶことです。
自宅環境やライフスタイルに合わない24時間換気を設置した後に後悔しても、簡単には交換出来ません。情報収集をした上で業者さんの提案を聞き、不明点があれば質問していきましょう。
下記に各換気の特徴を大まかにまとめましたので、参考にしてください。
第1種換気(ダクト式/ダクトレス式)・第3種換気の比較表
第1種(ダクト式) | 第1種(ダクトレス式) | 第3種 | |
---|---|---|---|
導入コスト | △ | 〇 | ◎ |
メンテナンスコスト | △ | 〇 | ◎ |
換気効率 | ◎ | 〇 | △ |
省エネ (冷暖房費削減) |
◎ | 〇 | × |
湿度調整(快適性) | 〇 | 〇 | × |
PM2.5や 花粉等の対策 |
〇 | 〇 | △ |
建築的な自由度 | △ | 〇 | ◎ |
騒音・音漏れ対策 | ◎ | △ | △ |
稼働音の静かさ | ◎ | △ | 〇 |
ZEH仕様対応 | 〇 | 〇 | × |
メンテナンスについて確認しよう
24時間換気を戸建て住宅に後付けする際の注意点の4つ目は、メンテナンスの方法、頻度、費用、などを確認することです。
メンテナンスを怠るとせっかくの24時間換気が機能せず、有害にもなりかねません。フィルターの脱着は簡単か、セルフメンテナンスができるかなどを確認し、自身が無理なくメンテナンスできる換気方式を選びましょう。
導入コストとランニングコストを検討しよう
24時間換気を戸建て住宅に後付けする際の5つ目の注意点は、導入コストに加えランニングコストを併せて検討することです。
ランニングコストとしては、電気代、フィルター交換やダクト清掃などのメンテナンス代、故障した際の修理代、などを考慮しましょう。
第1種換気の熱交換器について確認しよう
24時間換気を戸建て住宅に後付けする際の6つ目の注意点は、第1種換気を選ぶ場合、熱交換器の有無と種類を確認することです。
第1種換気=熱交換器付きと解釈されがちですが、熱交換器を伴わないシステムもあるので、注意が必要です。
熱交換器とは、屋外と室内の空気が持つ熱を装置内で交換し、内外の温度差を緩和する装置です。その際、温度のみでなく湿度も交換する『全熱交換型』と、温度のみ交換する『顕熱交換型』の2種類があります。
全熱交換型は冬場の乾燥や夏場のジメジメを抑え快適ですが、湿気とともに匂いを室内に戻してしまうというデメリットもあります。快適性に劣る顕熱交換型は、匂いを戻さないのでトイレや風呂場にも組み込めるというメリットがあります。
複数の業者を比較検討しよう
24時間換気を戸建て住宅に後付けする際の7つ目の注意点は、工事業者を検討する際、数社から提案を受け比べてみることです。
様々な意見を聞けますし、相場感も備わります。例えば第3種換気を薦められたとして、第1種も検討した上での提案なのか、第3種しか出来ないからの提案なのか、などを見極められます。誠実で良心的な業者さんを選んで下さい。
24時間換気を後付した後の注意点3つ
定期的に掃除をしよう
24時間換気を後付した後の注意点の1つ目は、忘れずにメンテナンスをすることです。
フィルター清掃や交換を怠ると付着した虫や埃でフィルターが目詰まりし、正常な換気ができなくなります。 また、ダクト式の第1種換気をつけた場合は、専門業者によるダクト清掃を定期的に行いましょう。放置すると、埃が溜まり菌を培養したダクトを通った空気を室内に送ることになり、健康にも害を及ぼしかねません。
屋内外の気圧差に注意しよう
24時間換気を後付した後の注意点の2つ目は、換気が正常に機能しないと屋内外に気圧差が生じることを覚えておくことです。
例えば、給気が足りない場合、空気を取り込もうと内側へ引っ張る力が生じ、玄関ドアが重く感じられます。そんな時はフィルターが目詰まりしていないか、給気口が開いているかなどを確認しましょう。
スイッチの切りっぱなしは止めよう
24時間換気を後付した後の注意点の3つ目は、24時間換気を長時間止めておかないことです。
長時間止める=長時間換気されないということなので、部屋が結露しカビの温床になります。
冬場に冷たい外気を入れるのが嫌だという方は、導入の際、熱交換器を組み込んだ第1種換気を検討しましょう。24時間換気を一時的に止める場合は、数時間にとどめるのが正解です。
自分に合った24時間換気を選び、快適な空間を作ろう
いかがでしたでしょうか。24時間換気を戸建て住宅に後付する際の様々な注意点をご紹介してきました。
まずは、現在のお住まいに24時間換気が必要か否かをしっかり見極めた上で、無理なく維持していける換気システムを選びましょう。ご自宅に合った24時間換気を設置し、心地よい空間を作ってください。